2021年11月14日日曜日

かげもの

 影踏みを覚えた幼子のように我を忘れてひたすらに影を追う。

線路際に落ちている影は人混みに揉まれて薄汚れてしまう。

空に舞う影はひらひらと漂うが透き通っていてもうじきただの空気となり果てるだろう。

海に流れた影は波に揺られてくらげになる。

街を歩けば不意に現れる影の正体は鳥。

影を追って影に縛られる私は影になり果てた。

ただそこにあって、ここにはいない。


0 件のコメント:

コメントを投稿

逃げる

  息を呑む会場を目の前にしたならば、消え去ることも容易であろう。ピーマンの空洞にいる私をどうか種明かししないでもらいたい。